顎が痛い・口が開かない…顎関節症の症状と受診すべきタイミング

2026年5月26日

「あくびをしたとき、あごの骨がカクッと鳴る……」
「ハンバーガーや硬いものを食べるとあごが痛い、最近口が開きにくい気がする」

そんなお口の違和感や痛みに悩まされていませんか?
あごが鳴ったり痛んだりする症状は、実は多くの方が経験している「顎関節症(がくかんせつしょう)」の代表的なサインです。特に20代〜50代の女性に多く見られる疾患ですが、「そのうち治るだろう」と放っておくと、急にあごがロックして口が開かなくなったり、慢性的な頭痛や肩こりを引き起こしたりと、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。

本記事では、顎関節症の主な症状や4つの病態タイプをはじめ、最大の引き金とされる「TCH(歯列接触癖)」や噛み合わせとの深い関係について分かりやすく解説。

顎関節症とは何か? その定義と特徴

顎関節症とは、顎関節や咀嚼筋に痛み・開口障害・関節音が生じる疾患の総称です。一つの原因ではなく、複数の要因が複合的に絡み合って発症します。

顎関節は左右に1つずつあり、下顎骨と頭蓋骨をつなぐ関節です。耳の穴のすぐ前方に位置し、咀嚼・嚥下・発話など日常的な動作を支えています。関節の間には「ディスク(関節円板)」と呼ばれる軟骨が挟まっており、衝撃を吸収する役割を担っています。

顎関節症は男性より女性に多く、2〜8倍という報告があります。発症年齢は20〜50代が中心で、特に若い女性に多い疾患です。

一生のうちに何らかの顎関節症状を経験する人は非常に多いとされますが、実際に治療が必要なレベルに達する人は症状を経験した人の約5%程度と推定されています

顎の痛み・開けにくさが気になる方へ

顎の症状は原因がさまざまです。気になる症状があるときは、早めにご相談いただくと選択肢を整理しやすくなります。

顎関節症の症状にはどんな種類があるか?

顎関節症の主な症状は「顎の痛み」「口が開かない(開口障害)」「関節音」の3つです。これらが単独または組み合わさって現れます。

痛みの症状

  • 顎関節の痛み:片側または両側の顎関節に痛みが出る。口を開けたときに特に強くなる
  • 咀嚼筋の痛み:こめかみ・頬・耳の周囲など、顎を動かす筋肉に痛みや張りが出る
  • 圧痛:顎関節を指で押すと痛みが出る
  • 食事時の痛み:バゲットなど硬い食べ物を噛んだときに「ゴリ」という音とともに痛みが出る

開口障害の症状

  • 口が大きく開かない:人差し指から薬指までの指3本を縦に入れられない(目安:35mm未満)
  • 顎がロックする:口を開けたまま閉じられなくなる、または閉じたまま開けられなくなる
  • 口を開けると顎がずれる:左右どちらかに顎がずれながら開く

関節音の症状

  • クリック音:口を開けたり閉じたりするときに「カクッ」「パキッ」という音がする
  • 捻髪音:「ゴリゴリ」「ジャリジャリ」という粗い音がする(変形性顎関節症で多い)

顎関節がロッキングして開けたり閉じたりすることが困難になるケースもあり、日常生活への支障が大きくなります。
当院の顎関節症・食いしばりへの対応はこちら

顎関節症の原因は何か? TCHや噛み合わせとの関係

顎関節症の原因は一つではなく、複数の要因が重なって発症します。なかでも「TCH(歯列接触癖)」は患者の8割以上に見られる最大の要因とされています。

TCH(歯列接触癖)とは

「TCH(Tooth Contacting Habit)」とは、日中に無意識に上下の歯を接触させ続ける癖のことです。本来、上下の歯が接触するのは食事や会話のときだけで、1日の接触時間は20分未満が正常とされています

しかし顎関節症の患者では、これをはるかに超える時間、上下の歯を接触させています。スマートフォンやパソコンを使うとき、緊張する場面などで無意識に歯を食いしばる人が多く、顎関節への負担が蓄積されます。

その他の主な原因

  • 日中の習慣:頬杖をつく、ガムを長時間噛む、爪噛み、片側だけで噛む、猫背
  • 夜間の習慣:歯ぎしり(ブラキシズム)、うつぶせ寝
  • 精神的要因:ストレス・緊張の続く仕事(TCHの誘発にもなる)
  • 外傷:転倒して顔を打った、顔をぶつけたなどの一度の外傷
  • スポーツ・楽器:テニス・サッカー・ゴルフなど強く噛みしめるスポーツ、サックス・フルートなどの吹奏楽器演奏
  • 噛み合わせの問題:歯並びの乱れや不正咬合による顎関節への偏った負荷

歯並びの乱れや噛み合わせの問題は、顎関節に不均等な力をかけ続けるため、顎関節症のリスクを高める要因の一つです。歯列矯正によって噛み合わせを整えることが、顎関節症の予防・改善につながるケースもあります。

顎関節症はどう分類されるか? 4つの病態タイプ

顎関節症は病態によって主に4つのタイプに分類されます。タイプによって治療方針が異なるため、正確な診断が重要です。

  • I型(咀嚼筋痛障害):顎を動かす筋肉に痛みが出るタイプ。関節そのものには異常がない
  • II型(顎関節痛障害):顎関節そのものに痛みが出るタイプ。関節包や靭帯の炎症が原因
  • III型(顎関節円板障害):関節円板(ディスク)がずれることで「カクッ」という音や開口障害が出るタイプ。最も多いタイプ
  • IV型(変形性顎関節症):顎関節の骨が変形するタイプ。「ゴリゴリ」という粗い音が特徴

治療目標は最大開口域40mm以上・疼痛なし・日常生活支障なしとされており、最大開口域35mm以上で軽度の疼痛であれば経過観察が推奨されています。

III型(顎関節円板障害)は患者全体の60%ほどを占めるとされ、関節円板がずれた状態(復位性・非復位性)によって治療法も変わります

顎関節症はいつ受診すべきか? 受診タイミングの目安

顎の痛みや口が開かない症状が1週間以上続く場合、または日常生活に支障が出ている場合は早めに受診してください。

すぐに受診すべき症状

  • 口が指3本分(約40mm)開かない:開口障害が強い場合は治療が必要なレベルの可能性がある
  • 痛みが1週間以上続く:自然軽快しない場合は専門的な評価が必要
  • 顎がロックして動かない:急性の開口障害は早期対処が重要
  • 食事が満足に取れない:栄養状態への影響が出ている場合
  • 頭痛・肩こり・耳鳴りを伴う:顎関節症が全身症状に波及している可能性

経過観察でよい場合

  • 関節音だけで痛みがなく、口が普通に開く
  • 一時的な痛みで、数日で軽快した
  • 最大開口域が35mm以上あり、日常生活への支障が軽度

初診時に中等度・重度の機能障害がある場合や、4〜8週間で軽度まで改善しない場合は高次医療機関への紹介基準とされています。

何科を受診すればよいか

顎関節症は歯科・口腔外科が主な受診先です。大学病院には顎関節症専門外来が設置されているところもあります。一部の整形外科でも対応可能な場合があります

かかりつけの歯科医院に相談することが最初のステップとして適切です。噛み合わせや歯並びに問題がある場合は、矯正治療を含めた総合的なアプローチが提案されることもあります。
噛み合わせを整える矯正治療についてはこちら

顎関節症の治療法にはどんな選択肢があるか?

顎関節症の治療は、まず侵襲の少ない保存的治療から始めるのが基本方針です。多くの場合、セルフケアや保存的治療で症状が改善します。

セルフケア・生活指導

  • TCHの改善:「歯を離す」意識を持つ。パソコンや冷蔵庫に「歯を離す」メモを貼るなどの行動療法
  • 顎の安静:硬い食べ物・大きく口を開ける動作を避ける
  • 温熱療法:痛みのある部位を温める(急性期の炎症が強い場合は冷やす)
  • 姿勢の改善:猫背・頬杖・うつぶせ寝をやめる
  • ストレス管理:リラクゼーション・睡眠の改善

スプリント療法(マウスピース)

「スタビライゼーションスプリント」と呼ばれる上顎または下顎に装着するマウスピースを使い、顎関節への負荷を分散させます。夜間の歯ぎしり・食いしばりの緩和にも有効で、顎関節症治療の中心的な方法の一つです。

薬物療法

非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)や筋弛緩薬が使われます。顎関節症に適応が認められているNSAIDsはインドメタシンとアンフェナクナトリウムなどに限られています。

理学療法

  • 顎運動訓練(開口訓練)
  • レーザー療法・温熱療法
  • マイオモニター(低周波電気刺激)
  • TENS(経皮的電気神経刺激)

咬合改善治療・矯正治療

噛み合わせの問題が顎関節症の一因となっている場合、歯列矯正によって咬合を整えることが根本的な改善につながることがあります。特に不正咬合が顎関節への偏った負荷を生んでいるケースでは、矯正治療が有効な選択肢となります。

外科的治療

保存的治療で改善しない重症例に対しては、顎関節洗浄療法・鏡視下手術・開放手術などが行われます。ただし外科的治療が必要になるのは全体のごく一部です。

症状が続く・繰り返す場合は、一度状態を確認しておくと安心です。受診の目安に迷うときもお気軽にお問い合わせください。

噛み合わせ・歯並びと顎関節症の関係は?

 

歯並びの乱れや不正咬合は、顎関節に不均等な力をかけ続けるため、顎関節症のリスク要因の一つとなります。ただし、噛み合わせだけが唯一の原因ではありません。

上下の歯が正しく噛み合っていない状態では、顎関節の片側に過剰な負荷がかかります。これが長期間続くと、関節円板のずれや顎関節の変形につながることがあります。

歯列矯正によって噛み合わせを整えることで、顎関節への負荷が均等化され、顎関節症の症状が改善するケースが報告されています。特に前歯の噛み合わせが深い(過蓋咬合)・受け口(反対咬合)・開咬(前歯が噛み合わない)などの不正咬合では、矯正治療との連携が重要です。

名古屋市東区のてらもと歯科医院では、顎関節症の原因となる噛み合わせの問題に対して、マウスピース矯正(インビザライン)やワイヤー矯正など、患者さんの状態に合わせた矯正治療を提案しています。矯正治療前には「iTero」口腔内スキャナーを使って歯並びの現状を精密に把握し、治療後の歯並びをシミュレーションで確認することができます。
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顎関節症の予防のために日常生活でできることは?

顎関節症の予防には、TCHの改善・姿勢の見直し・ストレス管理の3つが特に重要です。日常の小さな習慣の積み重ねが顎関節を守ります。

TCH(歯列接触癖)を意識して改善する

顎関節症患者の8割以上に見られるTCHは、意識して改善するだけで症状が改善する人が非常に多いとされています

  • パソコン・スマホを使うとき「歯を離す」を意識する
  • リマインダーシールを目につく場所に貼る
  • 緊張する場面でも意識的に歯を離す

日常の姿勢・習慣を見直す

  • 頬杖をつかない
  • うつぶせ寝をやめる
  • 猫背を改善する(スマホの使い方を見直す)
  • ガムを長時間噛まない
  • 片側だけで噛む癖をやめる

歯ぎしり・食いしばりへの対処

夜間の歯ぎしりや食いしばりは、自分では気づきにくいため、パートナーや家族に確認してもらうか、歯科医院でのチェックが有効です。マウスピース(スプリント)の装着で顎関節への負担を大幅に軽減できます。

定期的な歯科検診

定期検診で噛み合わせのチェックを受けることで、顎関節症の早期発見・早期対処が可能になります。歯並びの問題が見つかった場合は、矯正治療を検討することも予防につながります。

顎関節症の症状でお悩みの方、噛み合わせや歯並びが気になる方は、名古屋市東区のてらもと歯科医院にご相談ください。完全個室のカウンセリングルームで、院長・寺本清峰が患者さん一人ひとりの状態に合わせた治療プランをご提案します。マウスピース矯正(インビザライン)・ワイヤー矯正・裏側矯正など幅広い矯正治療に対応しており、まずは相談だけでも歓迎しています。
歯ぎしり・食いしばりを放置すると危険!マウスピース治療の効果と流れを徹底解説

よくある質問

顎関節症は自然に治りますか?

多くの場合、症状は一時的でセルフケアで改善します。ただし痛みが1週間以上続く・口が指3本分開かない場合は歯科・口腔外科を受診してください。

顎関節症の痛みはどこに出ますか?

顎関節(耳の前)・こめかみ・頬・耳の周囲などに痛みが出ます。頭痛・肩こり・耳鳴りを伴うこともあります。

顎関節症は何科を受診すればよいですか?

歯科・口腔外科が主な受診先です。大学病院には顎関節症専門外来もあります。かかりつけの歯科医院への相談が最初のステップとして適切です。

顎関節症の治療にはどのくらいの期間がかかりますか?

軽症であれば数週間〜数か月のセルフケア・スプリント療法で改善するケースが多いです。重症例や慢性化した場合はより長期の治療が必要になることがあります。

歯列矯正で顎関節症は改善しますか?

噛み合わせの問題が原因の場合、歯列矯正で咬合を整えることで顎関節への負荷が均等化され、症状が改善するケースがあります。矯正治療前に顎関節の状態を評価することが重要です。

顎関節症とストレスは関係ありますか?

関係があります。ストレスはTCH(歯列接触癖)を誘発し、精神的ストレス自体が身体の炎症を引き起こすことも知られています。ストレス管理が顎関節症の予防・改善に有効です。

子どもでも顎関節症になりますか?

なることがあります。ただし発症のピークは20〜30代で、10代後半から増加する傾向があります。学校歯科健診でも顎関節のチェックが行われています。

顎関節症の治療は保険適用になりますか?

スプリント療法・薬物療法・理学療法など多くの治療は保険適用です。ただし矯正治療は原則として自由診療となります。医療費控除の対象となる場合もあります。

顎関節症のセルフケアで効果的な方法は何ですか?

TCHの意識的な改善が最も効果的です。「歯を離す」意識を持つだけで症状が改善する人が多く報告されています。温熱療法・姿勢改善・顎の安静も有効です。

マウスピース矯正(インビザライン)は顎関節症でも受けられますか?

顎関節症の状態によっては矯正治療が可能です。まず顎関節の状態を評価し、症状が安定していれば矯正治療を進めることができます。担当歯科医師にご相談ください。

まとめ

顎関節症は顎の痛み・開口障害・関節音を三大症状とする疾患で、TCH(歯列接触癖)や噛み合わせの問題、ストレスなど複数の要因が絡み合って発症します。多くは保存的治療で改善しますが、痛みが1週間以上続く・口が指3本分開かない・日常生活に支障が出ている場合は早めに歯科・口腔外科を受診することが重要です。噛み合わせの問題が根本にある場合は、歯列矯正による咬合改善が長期的な解決策となります。まずはかかりつけの歯科医院に相談し、自分の顎関節の状態を正確に把握することから始めましょう。

 

 

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てらもと歯科医院(名古屋市東区・尼ヶ坂駅 徒歩5分)

顎の痛みや開けにくさが気になるときは、原因を確認することが第一歩です。気になる症状があれば早めにご相談ください。

【著者情報】

寺本 清峰

経歴

2004年 愛知学院歯学部 卒業
愛知学院大学歯学部附属病院 第一補綴学講座(現 有床義歯学講座)専科専攻生
2004年 合わせて、矯正専門医にて研修し、矯正治療を学ぶ
2006年 同講座 非常勤助手
2007年 大府市 松下歯科医院に勤務し、インプラント治療や審美治療を学ぶ
2012年 「てらもと歯科医院」開業

資格・所属学会・団体

  • 日本顎咬合学会 認定医 理事 副支部長
  • 日本臨床歯周病学会 会員
  • 日本口腔インプラント学会 会員
  • 日本臨床歯科学会(SJCD) 名古屋支部専務理事
  • NOAH(名古屋臨床咬合研究会) 会長
  • MIMCD 所属

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